広島市の郊外型ショッピングモールに、内科クリニックを移転開院する計画です。
「開放性としての大屋根」
外部に対しての開放性を得るため、壁を一定の高さに揃えて天井との間をつくり、天井を「ひとつながりの大屋根」として見せました。この大屋根は奥行きがあり、明るく伸びやかな空間を実現させています。これがショッピングモールに対する演出でもあり、さらにクリニックの休診日も、天井を照らすことで、各店舗間との賑わいの温度差をなくす効果を図っています。
「室容積と視線のコントロール」
既存の高い天井高をそのまま利用して開放性を得ることは、一方では空調や換気といった設備負荷を増大させることにつながります。そこで、居室部分の天井を傾斜させて高さに抑揚をつけることで、開放性と適正な室容積を調整しました。また利用者へのプライバシー配慮に関しては、ショッピングモールとの共存を考慮し、ファサード面を閉じるのではなく、外部からの視線を意識した各室の配置計画や動線計画を行うことで対応しています。
外へ開くことが必要とされる敷地において、内へ閉じた空間が求められるという特殊な条件でしたが、あらゆる視線を意識しながら、開くこと、閉じることを明確に現していくことで、両者が共存する豊かな空間が生まれたのではと感じています。