周辺環境から導かれた２つの棟と庭の豊かな関係性

愛媛県伊予市に建つ住宅。敷地は昭和54年に区画整理され、松山市に勤務先を持つベッドタウンとしての住宅地であった。敷地面積はどの区画も一様であり、建物を北に寄せて、南に庭を配置した計画がほとんどである。建主は、道路側以外は住宅で囲まれているため、周辺からのプライバシーを確保しながら開放性の高い暮らしを望まれた。
敷地の南側に庭を配置する場合、居室によっては通風と採光に大きく偏りができる。そのため、敷地南側と中央に２つの庭をつくり、北側隣地の庭も含めた３つの庭に挟まれるように建物を南棟と北棟に分けて配置することで、敷地に風の流れを導き出した。さらに北棟の床を半階ずつ上げたスキップフロアとすることにより、北棟の1階まで採光を取り込むことができ、床のずれに庭も合わせていくように地面を傾斜させることで、「観賞用の中庭」と「居室とつながる南庭」といった、使い方を明確に分けた２つの庭をつくる。LDKに立つ壁柱は、庇と合わせて水平力を負担する構造として機能させることにより、木造でありながら南北それぞれに大開口を実現した。
２つの庭から採光と通風が取り込まれ、植栽の色づきから季節の移ろいを感じることができ、内外の多様なつながりが生まれた空間になったと考えている。