KUWATA DOCKYARD
About The Project
KUWATA DOCKYARD
風景を編み直す社屋
尾道市浦崎の海沿いに建つこの社屋は、船舶修理業を営む桑田船渠と、船舶貸渡業を営む西浜汽船のための建て替えである。敷地西側には向島、南側には瀬戸内海の多島美が広がり、一方で敷地内には船舶修理用のドックやクレーンが並び、多様な船舶が行き交う造船の風景が存在している。工業的なスケールを持つドックの景色と、穏やかな瀬戸内の海景が重なり合う風景は、「造船の街」としての尾道を象徴する固有の環境である。
この建築では、敷地に広がるドック、多島美、向島といった多方向の景色を、社屋に必要とされる執務空間や共用空間とどのように接続できるかを主題とした。単に眺望を獲得するのではなく、働く環境そのものに地域固有の風景を織り込み、社員や来客がこの場所ならではの空気を体感できる場を目指している。それは企業としての魅力向上だけでなく、地方都市における新たな雇用環境の創出にも繋がるのではないかと考えた。
1階には、ドックとの往来が多い桑田船渠の執務室や打合せスペースを配置した。矩形平面の一角をドックのレーンに沿って斜めに切り取り、その方向へ大きく開く開口を設けることで、作業風景や船のスケール感を内部へ引き込んでいる。 一方、2階の西浜汽船はドックとの直接的な関係性が少ないため、1階の壁方向に対して平面を45度振ることで向島側へ視線を導いた。ここからは向島の風景とともに、行き交う船や瀬戸内へ沈む夕景を望むことができる。異なる方向へ空間を開くことで、同じ敷地にありながら、それぞれ異なる風景との関係性を持つ執務環境をつくり出している。さらに2階には、両社が共有するテラスを設けた。これは1階と2階の平面を異なる方向へ振ったことで生まれた余白であり、船首のような三角形の形態を与えている。社員が休憩や気分転換を行う場であると同時に、船に関わる企業としての象徴的な場所でもある。海外からの来客も多い西浜汽船のラウンジと応接室には床レベルの段差を設け、緩やかに領域を分節した。上段のラウンジからは瀬戸内の多島美を遠望し、下段からは向島とドックを近景として望むことができる。風景との距離感の違いを床レベルの差として空間に取り込み、多方向へ視線が展開する環境をつくり出した。
また、各階の床スラブをずらしながら構成することで、内部には吹抜けや視線の抜けが生まれ、上下階を横断しながら水平・垂直に視線が交錯する空間が形成されている。 2階の屋根は壁面から切り離し、浮遊するように見せることで、建物全体を包み込む大屋根として計画した。異なる事業を営む2社でありながら、ひとつの大屋根の下で風景と空間を共有することで、緩やかな一体感を生み出している。
屋上階には、ドック、向島、多島美のすべてを望むことのできるテラスを設けた。執務や商談、休憩など多目的に利用されるこの場所は、各階のずれを包含するように多方向へ広がる屋根形状によって、視線がパノラマに展開する空間となっている。
造船の風景、瀬戸内の自然、そして人々の営み。それらが幾層にも重なり合うこの社屋は、単なる業務空間ではなく、地域固有の風景と働く環境を編み直しながら、新たな尾道の風景を生み出していく建築となることを目指した。
| Date. | 2026.03 |
|---|---|
| Principal use. | 事務所 |
| Location. | 広島県尾道市 |
| Structure. | 鉄骨造 |
| Site area. | 916.74㎡ |
| Total floor area. | 439.27㎡ |
| Photo. | 矢野 紀行 |
| Assistant | 蝶野 慎明 |
|---|---|
| Construction | 中国工業開発 |
| Structural design | 金子武史構造設計事務所 |
| Furniture | Time & Style |
| Movie | toha |