吹抜け(境界)を通して風景を望む

敷地は広島市内西部に位置する閑静な住宅地。西は道路を挟んで河川が通り、北を見ると街並みの先に美しい山並みが広がる。川沿いの道路及び近くを通る国道からの騒音やプライバシー確保も与条件に入れながら、豊かな環境を取り込んだ暮らしを実現するための「境界」について考えた。川沿いの西側道路は敷地から1mほど高いため、生活の主体を1階として開口を設けたときに、道路からの視線ばかりが気になり遠景の山並みも見ることもできない。そこで、玄関→ダイニングキッチン→リビングの順に床を緩やかに分節しながら上げていき、２階に設けたセカンドリビングへと空間を連続させることで1階と2階の一体的なまとまりをつくった。1階は周辺環境から守られた空間として開口を絞り、吹抜けを介して空へと開く。吹抜けは外部と内部の境界となり、セカンドリビングや寝室、子供室から見る風景は、この境界を通して緩やかに繋がる。西側外壁は扇状に折り曲げることで、川の流れから山並みまで広がる風景をパノラマ状に取り込むことができ、その屈折点に設けた壁柱が水平力を負担し、木造でありながら大開口を実現している。
住宅と外環境の境界を、テラスや軒下といった空間ではなく吹抜に設定することで、街と風景との適度で柔らかな境界をつくり出せたのではと考えている。