瀬戸内海の多様な景色を取り込んだ開放的な暮らし

広島県呉市内から西の方角に位置する魚見山の山間に住宅地が広がり、このエリアから少し離れた敷地に建つ住宅。敷地からは、防風林を越えると瀬戸内海の美しい景色を望むことができる。この恵まれた環境を享受した暮らしを実現したい一方で、敷地のほとんどが崖となる断面形状のため、残されたわずかな緩勾配のエリアに計画する必要があった。
地盤の掘削量を最小限にするため、緩勾配エリアの形状と高低差に合わせて建物を配置したところ、１階の玄関を基準に半階下がって0.5階を寝室、半階上がって1.5階が子供室、さらに半階上がって2階が景色の最もよく見えるLDKおよび水回りというスキップフロアの構成が導かれた。敷地の高低差によって生まれた空間は、開口部の配置と大きさを操作することにより「リビングから一望できる呉市内の景色」「キッチンに立つと視界に入ってくる美しい夕景」「子供室から見える樹木越しの景色」といった、日々の生活シーンに多様な風景を取り込むことができた。リビングからさらに半階上がった2.5階のバルコニーは、瀬戸内海の景色をパノラマ状に一望でき、夏季に開催される海上花火大会も望むことができる。
敷地形状から導かれた空間によって周辺環境の豊かさを享受するだけではなく、地形に逆らわない建ち方が自然環境の移ろいと共に溶け込んでいくと考えている。