House in Yakeyama
広島県呉市の団地に建つ住宅です。敷地は一区画がゆとりのある住宅地で、周辺の敷地面積はほぼ一様であることから、建物を北側に寄せて南側に庭を配置した住宅が多く見られました。建主の要望は、北側道路以外は住宅で囲まれた敷地であるため、周辺環境からある程度のプライバシーを確保したいことと、採光を確保しながら風通しのよい空間にしたいことでした。
この住宅地に倣って敷地の南側に庭を配置する場合、居室によっては通風と採光に大きく偏りができるため、まず敷地の東と西に2つの庭を配置し、庭に挟まれるように建物を配置することで敷地内に風の流れを導きだしました。東西の庭は隣家に面しており、プライバシーを守るためには大きな塀を立てる必要がありますが、隣家が境界線に近いため圧迫感を与えてしまうことになります。そこで、鳥が羽を広げるように外壁をスライドさせて庭ごと囲むことで、外壁でありながら塀としての役割を持たせました(以下、ウイングウォールと呼称)。ウイングウォールは塀としての機能だけではなく、仕上げに木製ルーバーを採用してルーバーのピッチと傾きを東西それぞれの環境に合わせることで、採光と通風をコントロールする機能も持たせています。
背の高いブロック塀などで敷地境界線を囲む方法以外で、隣家からの見え方も含めてどのようなプライバシーを守る環境をつくるべきか、その回答のひとつとして生まれたウイングウォールは、街並に閉鎖感ではなくほどよい開放感を生み出しているのではないかと考えています。